夏の思い出 京都にて(3) 青蓮院
蹴上のインクライン、南禅寺の水路閣を見てから岡崎をまわり、京都で私の最も好きな寺院の一つである青蓮院へ。
盆地の京都はどこに行っても山を見ることができ、小さな流れであっても水を見ることができます。私が場所を問わず水が流れている景色が好きなのも、こんな街で育ったからかもしれません。
青蓮院の入り口にたどり着くと、迎えてくれるのは大きな楠。一説には12世紀に親鸞聖人の手によって植えられたと伝えられているそうですが、実際は13世紀以降に植樹されたものであろうとのこと。しかし長い年月を生きて来たその姿は、訪れる人に穏やかな眼差しを向けているかのような落ちついた風格があるように感じます。
どこに行っても人が多く、人の入っていない写真を撮るのが一苦労なのが京都の常ですが、この日は閉門前であったためか人が少なく、殆ど貸し切りに近い状態というこれまでにない幸運でした。
1788年に大火によって京都御所が炎上した際、後桜町上皇がこの青蓮院を仮御所となさったことから粟田御所とも呼ばれるこの寺院は、たおやかな女性を思わせる人間の身の丈に合った大きさに造られた寺院で、まるで仕立ての良い洋服が身体にぴったりとフィットするような柔らかさとしなやかさで訪れる人を包み込んでくれるような気がします。
今回私がこの寺院を訪れたのは8月2日だったのですが、とうに季節外れになっているはずの紫陽花が、まるで待っていてくれたかのように咲いていました。
この優しさにずっと包まれていたい、と離れがたい気持ちは尽きないのですが、「上を向いてしっかりと歩き続けなくてはね」と最後に伸びやかな竹が静かに語りかけるように送り出してくれました。
夏の思い出 京都にて(2) 蹴上インクライン
琵琶湖疏水ができるまで滋賀と京都の間の輸送は人や馬が行っており、大量の物資を運ぶのは難しかったため、琵琶湖の水を京都に引き込む疎水工事(明治18年着工 同23年竣工)の際に船による輸送能力の向上を目的として開かれたのが蹴上インクライン。乗り鉄の私も、この線路だけは今となっては眺めることしかできません。
船は自力で坂道を上がれないので、動力で持ち上げることが必要だったのですね。疎水工事は、東京が遷都された後の京都の発展にとっても重要と考えられていたようで、発電や灌漑など複数の目的も有していました。先日ご紹介した南禅寺の「水路閣」もこの疎水工事の一環
滋賀から京都まで、連なる山々を貫いて行われた当時としては非常に大規模なこの工事、多額の予算が投入されたこともさることながら、西欧技術が日本に導入されて間もない頃に日本人の手によって設計・施工が成し遂げられています。
ということを現地の表示で改めて確認して、はたと思いました。
夏の盛りには絶対に帰省しなかった私が今年はなぜ無理やりにでも時間を作ってでも帰って来ようとしたのか、なぜ出不精の私を動かすほど今回なぜここに一番に来たくて仕方がなかったのか。
人間の適応力を超えているのではないかと思われるほどに速く、大きく変わりゆく世界の中で一体この後どのようにして生きて行けばよいのか考え続ける私のこの何年もの日々、それまでの都から一転して一地方都市になった京都の再生をかけて大きなチャレンジをした人々がそんな私を見かねて何かを伝えようと、ここに呼んでくれたのかもしれません。
夏の思い出 京都にて(1) 南禅寺 水路閣
京都府出身(ここは重要です。京都市内の出身でなければ「京都出身」とは名乗れませんからね!)の私ですが、東京に住んで長く、たまに帰省することがあっても仕事疲れで実家でゴロゴロして怠惰に過ごすか、せいぜい友人と会って軽く食事でもする程度。せっかく京都に足を運んでも、名所を訪れることはもう10年以上もありませんでした。
その私がなぜかこの夏はいくつか足を運んでみたいと思う場所があり、東京に較べると厳しい暑さの中をてくてくと歩き中心で行って来ました。
まず今回無性に訪れたかったのは、南禅寺。お寺そのものも勿論素晴らしいのですが、なぜか今回は「水路閣」を見たくてたまりませんでした。
ところでこの「水路閣」、上にあがって水が流れているところをご覧になった方も多いと思います。もうかつての役目を果たす事はありませんが、今でも水は流れ続けているんですね。
この日はお盆前ということもあり観光客の方も少なくて、水路閣の上から少しだけ足をのばせば静かで自然豊かな場所がそこに待っていてくれました。
街中からこんな近い場所に水の音と蝉の声、そして緑の薫り立つ自然があるのも京都の魅力の一つなのでしょう。
香港の街角おやつ
旅先で自分の足で街を歩き思いがけない発見をすると嬉しいものですが、今回は香港の街角でおやつを売っているおばさんを発見。
先を急いでいたので一旦通り過ぎたのですが後ろ髪をひかれる思いがしたので、引き返した次第。
サンドイッチや色とりどりのお菓子を売っていて選ぶのに迷ったのですが、今回私が買ったのは2種類。
まずは、こちら。
日本の「ういろう」と非常によく似た味のお米の粉を蒸したお菓子。小豆が入っていてほんのり甘く、「ういろう」より少し柔らかめの食感。ホテルに持って帰って食べたのですが、蒸したてを買ったので、まだほのかに温かくておいしかったです。
もうひとつは、こちら。夕焼け空のようなきれいな色に魅かれて買ってみました。
名前を聞いたら、おばさんは「馬蹄糕」という札を指さしてくれたのですが、どうして馬蹄なのでしょう。これもほのかに甘い、お米の粉を蒸したお菓子で、食感はゼリーのようにプルプルしていました。
他にもおいしそうな蒸しパンや蒸し菓子を売っており、仕事帰りと思われるOLらしき風情の若い女性や近所の主婦のような方が次々と訪れてお菓子を買っていました。売っている蒸し菓子のように温かくて優しい表情のおばさん。仕事モードからプライベートモードへの切り替えのゲートウェイなのかもしれませんね。
ごちそうさまでした。
香港で豆乳
日本では殆ど豆乳を飲まない私ですが、中国で初めて豆乳を飲んでそのおいしさに感動してから、中国を訪れるたびに豆乳を探してでも飲むようになりました。
今回の香港では中々豆乳を飲むことができなかったので、まずは7-Elevenでペットボトル入りの豆乳を買ってみました。
「大和」なるネーミングに違和感を覚えつつラベルを見ると、台湾製でした。おいしいのですが、これまで中国で飲んだ豆乳より水っぽくて薄い感じ。ペットボトル入りですから、香りもあまりありません。加糖したものもあったのですが、私は「原味」を選択。でも少しお砂糖が入っていました。
何となく豆乳に対する欲求不満が溜まったまま迎えた今回の香港滞在最終日、先日「海老ワンタン麺」と「烏賊団子麺」でご紹介した食堂で豆乳を見つけ、早速注文。
これです、これです、私が飲みたかった豆乳は。フルーティで自然な甘み。大豆臭さがなくさらりとした喉越し。
夜に麺と一緒に頼んだのですが、翌朝再度この食堂を訪れた時、朝食セットのドリンクは迷わず豆乳にしました。
飲めてよかった。
ごちそうさまでした。
香港でフレンチトースト
ガイドブックにはよく載っていますよね「香港式フレンチトースト」。こんがりきつね色をしていて、おいしそうです。
これまで「香港式フレンチトースト」を食べたことのない私は、香港島のオフィス街の一角にあるビルの中のスノッブなカフェのメニューに「スーパーモイストフレンチトースト」なるものを発見し、食べてみることに。
期待に胸を膨らませて待っていると、運ばれて来ました「スーパーモイストフレンチトースト」。
付いて来たメープルシロップをかけて一口食べてみると…。
「うーん、揚げパン」
これならパン生地をあげた昔ながらのシンプルなドーナツの方が、ずっとおいしいかもしれません。
ちなみに付け合わせだった生のラズベリーは、とてもおいしかったです。
今回は期待外れでしたが、次回はまた違う店で試してみたいと思います「香港式フレンチトースト」。
ごちそうさまでした。
香港で麺・麺そしてまた麺(5)
今回の香港滞在最後の夜に食べた麺のおいしさが忘れられず、出発の日の朝再びホテル近くの同じ食堂へ。
夕食メニューにはお粥があったので、「是非朝はあの店のお粥が食べてみたい!」と張り切って行ったのですが、夕食メニューはとても種類が多かったのに朝は限られたメニューのみ。5つの具材から選ぶようになっていて、相手は「麺」「粉」「米」と書いてあるのですが、「米」がお粥かどうかわからないので、無難に前日おいしかった「麺」を頼むことに。ちなみに朝は飲み物がセットになっていて、私の隣の男性はコーヒーを頼んでいました。
この日選んだ具材は、「墨魚」つまり烏賊のすり身で作った団子。
麺とスープは前日感動済みなのですが、この烏賊団子がまたおいしい。食材そのものの「香り」を感じなくなって久しいですが、香港で食べるものは食材の味が濃く、日本で食べるものより香りを強く感じる気がします。この烏賊団子もしかり。でも決して「生臭い」訳ではありません。すり身は柔らかすぎず烏賊そのものの食感が残っています。またすり身の中に少し歯触りを感じる程度に烏賊の足をいれてあり、これがまたコリコリとよい食感。
それに朝の麺には、炒めたニンニクが入っていないのです。これから仕事に行く人への配慮なのでしょうね。
お粥を食べられなかったのは残念でしたが、出発前に再びおいしい麺を味わえてよかったです。
次回香港を訪れる時は、この店を再度訪れるために同じホテルに泊まろうかなどと考えています。
ごちそうさまでした。